大阪高等裁判所 昭和62年(ラ)318号 決定 1987年8月12日
抗告人 楢崎産業株式会社
代表者代表取締役 水田啓
代理人弁護士 長谷川弘
早川忠宏
相手方 青木工務店こと 青木政之助
第三債務者 株式会社 滋賀相互銀行
代表者代表取締役 窪田常信
主文
原決定を取り消す。
本件を大津地方裁判所に差戻す。
理由
一 本件抗告の趣旨と理由は別紙記載のとおりである。
二 当裁判所の判断
原決定は、本件債権差押命令の申立は大津地方裁判所長浜支部昭和六一年(手ワ)第四号約束手形金請求事件の手形判決を債務名義とするものであるところ、本件債権差押命令申立当時既に当該債務名義につき執行停止決定がなされていたことが職務上明らかであるとの理由により、本件申立てを却下した。これに対し抗告人は、原決定は民事執行法三九条を無視するもので許されない旨主張する。
そこで考えるに、債権差押命令の申立てを受けた執行裁判所は、申立てが適法であり、差押えの要件が具備されているときは、当該事件につき民事執行法三九条所定の書面が提出されない限り(同条一項本文)、原則として差押命令を発すべきであって、たまたま別個の執行事件につき同一の債務名義につき同一の債務者から同条一項七号の書面として執行停止決定が提出されていたとしても、執行停止決定は当然にその目的たる債務名義の実体的執行力を奪うものではないから、当該債権差押命令申立てを拒否する理由とすることはできないと解すべきである。
本件記録には、債務者から執行停止決定が提出された形跡が認められない。
したがって、本件債権差押命令申立てを却下した原決定には民事執行法三九条の解釈を誤った違法があるから、これを取り消し、更に裁判をさせるため、本件を大津地方裁判所(本庁)に差戻すのが相当である。
よって、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 大和勇美 裁判官 久末洋三 稲田龍樹)
<以下省略>